高校生の頃にこの本、兄に勧められて読みました。
なんの予備知識も無く、もちろん北方謙三なんていう作家も知らないガキでした。
長編のハードボイルド小説。
やられました、文句なく最高にカッコイイ小説でした。
内容は主人公、幸二が誤認逮捕をきっかけに社会からアウトロー化していき、成り行きでヤクザを殺してしまう。刑事、ヤクザ、に追われる身となった幸二、これまた成り行きで出会った5歳の孤児ヒロシとともに全てを振り切って逃亡し、冬の軽井沢まで逃げる。....という。
まぁざっとこんな感じなんですが、まるで映画を観ているように次から次へと場面が展開し、その都度ハラハラする。
[1回]
この小説の解説でも書かれていましたが、一本の一貫した物語と言うよりも、偶然というか成り行きで物語が進むので、謎とか真犯人とかそんなものが一切おらず、逆に話のテンポがよくなってます。
状況を表現するのに、余計な文章をばっさりカットした北方謙三先生特有の(笑)「ハードボイルド文体」が物語を加速させ、読者の脳裏に場面を描かせることに成功しています。
最後はハッピーエンドではなく、滅びの美学というか、生き急いだ男の切なさが胸を打って泣けてきます。高校生の多感な時期だったわたしには衝撃的でした。
以降、北方謙三先生のハードボイルド小説を読み漁りましたが、この「逃れの街」ほどのインパクトは残せなかったですね~どれも似たり寄ったりというか(笑)
読み手のわたしが歳をとって先生のパワフルな“男象”を消化しきれなくなった(笑)とも言えます。先生が描く“男”たちに「また出たな!?」みたいな....食傷気味な感じ。
現代の日本では「逃れの街」のような作品を連発する事自体無理があるわけで、その後歴史小説なんかも執筆されていきます。日本の南北朝時代の武士たちを主人公にしたものや、三国志など書いています。
ここでもやはり独特の“男の中の男”がこれでもか!!と登場してきますが(笑)なぜか歴史物になるとそれが許せるワケで....
まぁしかし、この「ハードボイルド文体」と「かっこいい男像」の二つが当時高校生だったわたしに強烈なインパクトを残したことは間違いないですね~
今でも自分が読んだ本のベスト5には確実に入ります。とくに刺激を求めてやまない男性にはお薦めの本ですよ~

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